エランズカフェ

珈琲は本当に生鮮食品ですか?

   

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「珈琲は生鮮食品です。鮮度が命!」
こんなフレーズを聞いたこと、ないですか?
同業者の方にケンカを売るつもりはまったく無いですが、これ、「嘘」だと思うんです。

いや、「嘘」は言いすぎですね。ごめんなさい。いや、ほんと、怒らないでください。でも、真実じゃないのは、業界の方ならよくご存知のはずですよね?

提案なんですけど、この「珈琲業界の嘘」、そろそろやめにしませんか?

珈琲は腐らない

「生鮮食品」って聞くと一般の方は、鮮魚とか牛乳とかを連想されるんじゃないでしょうか。常温に置いておくと数日で異臭を放つこともあるそれらの「生鮮食品」と、同じ形容詞で珈琲を飾るのは、お客様に対して不誠実だと思うんです。

たしかに焙煎した珈琲豆は劣化します。でもそれは本当にゆっくりとしたスピードでしか進まないんです。イメージとして近いのは、ソーセージなどの燻製食品か、鰹節などの乾物です。

焙煎と劣化

珈琲豆は生豆(なままめ)を200度以上の高温で10~20分くらい熱します。この環境で生存できる菌はいません。そもそも珈琲はpH5~6の弱酸性で、腐敗菌が生きていける環境ではありません。

あとから付着しない限り、焙煎豆は滅菌状態なんです。

古い珈琲豆は酸化する、という事を仰る方もいます。これは具体的になにを意味しているのか曖昧です。酸素と結合という意味での酸化(=燃焼)なら焙煎中にかなり進んでいます。

深煎り豆の表面ににじみ出る油が酸化(=アルデヒド型酸敗)する、というなら意味なら少しわかりますが、それには高い温度・光・水分・酸素などの悪条件が必要です。高温多湿、かつ明るいところに長期間放置しなければ、ほとんど起こりません。

もし、焙煎して一週間くらいで味が劣化するようなら、その豆は生焙けです。成分がきちんと化学変化しきっておらず、水分も残っているから劣化するのです。

珈琲が「生鮮食品」になった歴史

珈琲の近代の歴史を乱暴に説明してみます。

円高と食文化の変化

かつて多くの喫茶店で出される珈琲は、大手のロースターが焙煎した豆を仕入れて、店では抽出するだけでした。なので、他店との差別化も図りにくく、鮮度も悪い状態でした。仕入れ値も安くなかったため、少量の豆でできるだけ味を出す必要がありました。高温抽出ができるサイフォンなどの器具を使い、少しでも味と濃さを出す研究が行われました。

1986年、それまで1ドル=250円くらいだった円の価値が、一気に1ドル=150円まで上がりました。その結果、海外旅行をする人が増えたり、日本でも海外の食材が安く食べられるようになりました。本格的なフレンチやイタリアンのレストランもオープンしました。食文化が変化し、日本人の味覚が欧米化したのです。

円高になったことで、コーヒーの生豆も安く輸入できるようになりました。お客様も、より高品質の珈琲を求められるようになりました。環境が整い、ニーズが高まったことにより、自家焙煎の珈琲店がたくさん生まれました。

「鮮度」の発明

しかし、今ほど情報もない当時、経験の浅い店主達の焙煎技術はあまり高くありませんでした。それでも、なんとか既存店と差別化しようと考えた結果「発明」されたのが、「珈琲の鮮度」という概念です。

「大手ロースターの豆を使ってる喫茶店と違って、うちの珈琲は自家焙煎だから鮮度がいいんですよ!ほら、お湯を注ぐとふわーっと膨らむでしょ♪ どうです?香りもいいでしょ?」

この戦略は当たりました。技術や美味しさに関係なく「鮮度」はつくれるし、世間の食品衛生に対する関心が高まる波に乗れたからです。

「珈琲は鮮度が命」というキャッチフレーズが便利だったのは、大手との差別化だけではありません。焙煎の技術がそこそこのお店の豆は、確かに劣化が早かったのですが、それを鮮度のせいにできたのです。珈琲は早く飲まないとまずくなる、逆に言えば、まずいのは早く飲まないからだ、と。

劣化 or 熟成

でも、腕のある焙煎士さんならご存知のはずです。きちんと焙煎できた豆は、そんなに簡単に劣化しないことを。

ちゃんと焙煎できている豆であれば、一週間をこえたあたりから味が深くなっていきます。エランズカフェの豆は一週間から一ヶ月くらいが一番おいしく、常温保存で三ヶ月は充分にもちます。達人の焙煎した豆ならもっと長くもつはずです。(※粉にすると風味が落ちるスピードは一気に早くなります)

お客様はだませない

これからカフェの開業を考えてらっしゃる方には、「珈琲は生鮮食品です」という謳い文句を使うことはおすすめしません。真実じゃないですし、営業上もデメリットが大きいと思います。

今のお客様はきちんと自分の味覚と感性で、商品の良し悪しを判断されます。絶対に見くびったり嘘を言ってはいけません。「新鮮・煎りたて」という言葉だけで買っていただける時代じゃないんです。本当に美味しくなければダメなんです。

鮮度を全面に押し出しちゃうと、焙煎から一週間たった豆はもう売れなくなります。鮮度を重視されるお客様はこう仰るでしょう、「煎りたてはないの?」と。

せっかくこれから味が乗ってくるというタイミングで、泣く泣く廃棄しなければいけなくなります。廃棄ロスを出すということは、そのコストがまわりまわって売価に反映されます。他店との品質・価格競争に負けてしまうでしょう。

まとめ

同業者のみなさん、お互いに焙煎技術を磨きましょう。「鮮度」や「受賞豆」などの、本質的でないキャッチフレーズで営業するのをやめて、背筋を伸ばしてお客様と向きあいませんか?

…えっと、ここまで書いてみて、この文章を公開するのをためらってます。やっぱり同業者の方に嫌われちゃうかなぁ。悪口とか言われるようになっちゃうかなぁ。。

あ、ちなみに、エランズカフェが「鮮度」を宣伝文句に使わないからといって、古い豆を使ってるわけじゃないですからね。週に2回~3回焙煎してます。お店で提供している珈琲は一週間くらい寝かせたものを、豆をお求めのお客様には焙煎から中一日くらいおいたものをお渡ししています。ゆっくりと味の変化をお楽しみください。

ご意見・ご感想をお待ちしています(お手柔らかに)。


 - エランズカフェの育て方

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