大失敗から生まれたふたつの極上プリン

桜の様子です。

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永遠に続くかと思えた寒い寒い冬もようやく終わりました。待ちに待った春のはじまりです。

今回はプリンのリニューアルのお知らせです。

プリンをリニューアルすることにした経緯

恥ずかしいのですが、先月とても大きな失敗をしました。
不完全な抹茶プリンをお客様に販売してしまったのです。

外側はいつもどおり固まっていたのですが、中心まできちんと熱がはいっておらず、スプーンを入れるとプリン液が流れ出す状態だったのです。

気がついたときにはすでに数人のお客様にテイクアウト販売していたあとでした。
一瞬、頭が真っ白になりました。

新鮮な材料を使っていますから固まっていなくても健康被害があるようなことはありません。しかし、まったく不完全なものを販売してしまったことは悔やんでも悔やみきれない痛恨のミスです。

どのお客様に販売したのかはおぼえていましたが、連絡先はわかりません。ありがたいことに数日のうちに来店してくださったので、お詫びを伝え代金をお返ししました。

もちろん抹茶プリンの販売はしばらくお休みすることにしました。原因の特定と再発防止策が決まるまではお売りすることはできません。

なぜプリンが固まっていなかったのか

なぜその日の抹茶プリンはきちんと固まらなかったのでしょうか。そもそもプリンとはどういうスイーツなのでしょう。

プリンはとてもベーシックなスイーツです。プリンを食べたことがない人はおそらくいないでしょう。老若男女、誰にでも親しまれ愛されている定番中の定番スイーツです。ご自宅や学校などで作ったことのある方も少なくないでしょう。

材料は多くありません。卵と牛乳と砂糖だけでつくれます。それらの材料を混ぜ合わせ、オーブンや電子レンジ、蒸し器などで加熱すれば出来上がり、シンプルの極みのようなスイーツです。それだけに奥が深く、本当においしく作ることは難しいのだと、今回改めて思い知りました。

プリンの種類と解決方法

プリンには、昔ながらの少し固めな「どっしりプリン」タイプと、口どけなめらかな「とろとろプリン」タイプがあります。
エランズカフェではこの「とろとろプリン」タイプを採用しています。

プリンをとろとろにするには、2つの方法があります。

方法その一は、牛乳や生クリームの割合を増やして、卵を少なくする方法です。
生クリームと牛乳をたっぷり使うことによって卵のタンパク質濃度をへらした固まる力の弱いプリン液に、高めの温度を短時間加えます。

失敗してしまったプリンはこのやり方でした。

卵に一定の温度を加えるためには沸騰したお湯を使うのが簡単です。
プリン液を入れた容器を沸騰したお湯へつけます。弱火でお湯の沸点をキープすれば100度の温度を保ち続けることができるのです。ですがこまったことに卵にとって100度の熱は高すぎるんです。

そこで工夫が必要です。わたしがこれまでやっていた方法はこうです。

まず土鍋でお湯を沸騰させたら火を止め、そこへプリン液のはいった容器をいれます。土鍋にフタをしてさらに保温カバーをかぶせて保温します。良さそうなタイミングまでそのまま放置。時間がきたらプリン容器を土鍋から水に移して冷まします。

これは広く使われている方法で、わたしもこれまで何百回も作ってきましたが、なぜか失敗したのです。

考えてみれば当然のことでした。
この方法は、最初の温度がもっとも高く、そこからゆるやかに冷めていきます。プリンの液体は表面から中心に向かって固まっていきます。こうして作ると表面はすぐに固まりますが、中の状態を見極めることが難しいのです。

不安定になる原因は気温です。暑い夏は高い温度を持続できますが、冬は冷めるのが早いんです。その日の気温にあわせてお湯の量をかえたり保温する時間を調整していました。
気温を読み間違うと中まで固まりません。いわゆる「職人のカン」を使ってプリンを作っていました。失敗の原因はわたしの慢心です。

抜本的に作り方をかえなければきっとまた同じ過ちを繰り返してしまいます。どうすればいいのでしょうか。

おいしい『とろとろプリン』のつくりかたと難しさ

答えはいつもシンプル、ゆっくりと長い時間をかけて低めの熱を加えれば良かったんです。
ゆっくり熱を加えればプリンは底から固まるので、上面まで固まっていれば中が液体のままということは起こりえません。

しかしこのやり方にも欠点があります。温度のコントロールがとても難しいのです。

卵はとてもデリケートな食材で、わずかな温度の違いが仕上がりを大きく左右します。
卵白と卵黄は固まる温度が違います。卵白は約60度で固まり始め約80度以上で完全に固まります。卵黄は65度から固まり始め75度以上で完全に固まります。同じタンパク質でも性質が違うのです。加熱のスピードによっても固まり方が変わります。

100度以下の湯温を長時間キープするのは難問です。

そこで今回、遅まきながら低温調理器を導入しました。低温調理器を使うと湯煎するお湯の温度を安定して保ち続けることができます。かつてはとても難しかった温度のコントロールがいとも簡単に実現することができます。

また、プリン液へやわらかく熱を加えられるよう、容器を耐熱プラスチック製からガラス製のものにかえました。

解決策がわかりました。ここからはひたすら試作と試食の繰り返しです。
プリン液のレシピを変えながら温度と時間を細かく変化させて、最も理想的なポイントを探りました。

たった1度高くても低くても仕上がりが変わります。保温時間が数分ずれてもダメです。
最終的にはプリン液を78度に60分間保つことで、フルフルとした極上の絹豆腐のようなプリンが完成しました。

完成! 極上プリン!

以前のレシピはやわらかくするために味が犠牲になっていました。新しいプリンのかたさは温度と時間でコントロールするので、レシピは純粋においしさを追求することができました。

生クリームたっぷりから卵黄たっぷりにかえました。材料は卵黄・牛乳・生クリーム・砂糖だけです。底にはラム酒で香りをつけたカラメルソースを沈めています。
卵黄をたっぷり使っているので卵のとても良い香りがします。

どこまでもやわらかい食感です。ほんとうにとろけます。わたし自身、こんな食感のプリンをこれまで食べたことはありません。
『ふるふる卵黄プリン』と名付けました。

この『ふるふる卵黄プリン』に上質の抹茶をたっぷりと加えたのが新しい抹茶プリンです。もちろん抹茶プリンに最適な温度と時間を追求しました。

抹茶のスイーツはいまや珍しくありませんですが、こんなにたっぷりと抹茶を使っているプリンはめったにないと思います。
まるでホワイトチョコレートで作ったクリームのようなしっとりとしたなめらかな食感です。抹茶が卵の水分をすうことでおいしさが凝縮するようです。卵黄のやさしい甘みと抹茶の滋味が引き立てあいます。

こちらは『しっとり抹茶プリン』と名付けました。

こうして、お客様に二度とご迷惑をかけない安定性と、王道でありながら新しい食感の2つのプリンが完成したのです。

エランズカフェにいらっしゃるすべてのお客様に一度召し上がっていただきたいです。なにより不完全なものをお売りしてしまったお客様にはやくご報告したいです。

むすび

庭の桜も満を持して次々に花ひらいています。エランズカフェが最も華やぐ季節です。
桜を愛でながら、珈琲とスイーツをお楽しみください。

フレンチトーストの春バージョンも今日からスタートします。

旬のイチゴをコンポートして、フレンチトーストに添えて提供します。ソースの隠し味に桜餅の香りがする洋酒と練乳を使っています。フレッシュなイチゴの香りとちょっと懐かしい香りがします。熱々ふわふわのフレンチトーストによく合いますよ。

お客様のゆったりとした時間をお手伝いするために、一歩ずつ精進していきます。お気づきのことがあればどうぞご遠慮無くお申し付けください。

いつでも いつものように お待ちしています。